30年前に、トヨタが一連のエンジン改革を行った物に対してレーザーエンジンと名を打った。新しいエンジンです。と言ってもその内容(設計思想)がユーザーに訴えることができなければ商品価値が無い。地道に4気筒エンジンの欠点の振動を消すことができたサイレントシャフト技術も玄人にはその凄さがわかっても購買ユーザーには何のことかさっぱり分からない故、販売に結び付かず、それがいかに有用な技術であったか?がわるるのが、特許切れ以降世界中の自動車メーカーが採用している技術である。
マツダが来年市販するエンジン技術はまさにトヨタ風コンセプト名称いやアーキテクチャー思想と言えるSKYシリーズだ。エンジンやミッション、シャシーに至るまで、現在まで定石とされていた常識を打ち破り、しかも古典的な手法を駆使してそれまでの不可能とされていた領域に到達した。まさにコンセプトが明確な効率と省エネをテーマに、新しい技術を何一つ使わずに、新しい常識を提言したと言える。抽象的な表現では何が古典であり何が新しい常識であるかわかりずらいと思うので整理して見よう。
内燃機関として特にエンジンは、空気14.7に対してガソリン1の割合が一番燃焼効率がいいとされている。また、その内燃機の容積と燃焼室の比率も10:1程度がRON91(レギュラーガソリン)で常識とされていた。
所がSKY-Gなるアーキテクチャーは、その常識を打ち破る14:1での圧縮比をRON91燃料で実現したと言うのだ。現在まで、直噴ガソリンで12:1程度が市販車での限界であり様々な気候や環境での常識的限界であった。
条件さえ整えば確かに14:1での燃焼も可能であるが、実際現在の自動車産業では、グローバル化が進み世界中の気候、環境で販売しなければ成り立たない。そのためリコール等、会社が一気に死滅してしまう恐れがある恐怖と背中合わせの中、サラリーマン気質な技術者では到底やらない領域である。
また実現した14:1は、その解決方法に原点とも言える古典的な技術の積み重ねで実現しているようだ。
第一にエキゾーストマニフォールド(排気管)をレーシングカー並みの4−2−1排気でさらに俗に言うタコ足排気管を採用している。
オーバーラップ(吸気と排気のタイミングが重なっている間)時に、流動が遅い場合、吸気サイクル中の他の気筒へ排気が逆流する。それを嫌い排気干渉を抑えるための古典的な手法である。それによって回転域毎の条件不一致を解消しながら排気効率を上げることで安定した燃焼を実現している。コスト増や重量増、冷間時の排気ガス浄化の劣化などマイナス面はあるが現在の技術ではさして問題にならない。それよりも14:1によるエンジン燃焼の高効率化とそれによる燃費改善に寄与する方が上回っている。
また、もうこれ以上摩擦等による損失軽減はコストと見合わないとされていたエンジンそのものの抵抗値=フリクションロスを大幅に削減することに成功している。これはいち早くオーットーサイクルが常識であった時代に、ロータリーエンジンを物にしたり、ミラーサイクルを市販化したり、内燃機の原点へ立ち返り燃焼と言う物に対する科学的資料や実験値がかなり蓄積されている社風がなせる匠の技と思える。
現在、日本ではいかに安くいかに上手に売っている会社が大企業で儲けているかもしれないが、日本はこれからは世界に無い匠の技術を商品として販売していかなければ世界の工場化している中国などと競争することができない。
まさに、マツダが挑みこれから販売していくSKYのような技のある製品作りが重要である。
資本力、人材力などもどこかの大手メーカーよりも少ない中、よくぞ長い年月守ってきた社風から見事に古くて新しい技術を生み出した。感動した。